生活保護受給者に自己責任論を訴える人は、鈴木大介氏『最貧困女子』を読んでみろ!
大和彩さんが書いた『失職女子』がネット上で話題になっています。
当ブログでも、前回、『失職女子』を紹介させて頂きました。
貧困女子たちよ、大和彩氏『失職女子』を読んで、家賃が払えなくなった時の場合に備えよ♪ - 脱貧困ブログ
リアルタイムの生活保護受給者が書いた本という事もあって、様々な意見が出ているみたいですね。
中でも目立つのは、批判的な意見です。
たとえば、こんなコメント。
契約を切られるってのは、つまり会社側が延長して契約したいとか正採用したいと思わない人材だったんじゃないのかな…?
あと、こんなコメントも。
ずっと同じハロワの担当者だったみたいだけど、その人の見解も聞きたい。35歳で100社も落ちるってかなり異常だよ。
大和さんは、『失職女子』の中で、派遣の契約を切られたこと、就活中に100社落ちた経験を書かれています。
コメントは、その事をつっこんでいるんでしょうね。
このコメントに対して、大和さんはこんなふうに返答しています。
うん、私自身に問題があるという事は、私はまっっっったく否定しませんよ。
「失職is自己責任」と思ってらっしゃるわけですよね
けれど、それだけでは、日本中にあふれる失業者数が210万人であることや、今や3人に1人が非正規雇用になっていることに対する説明には、なりませんよね。210万人の日本人、全員が能力がないために失業している、とお考えですか?210万人、全員が?
なかなか鋭い指摘ですよね。
「えっ?今って、3人に1人が非正規雇用なの?」と、驚かれた方もいるのではないでしょうか?
今回は、大和さんの返答にあった『失職IS自己責任』について、考えたいと思うんです。
自己責任論主義者は、『最貧困女子』が見えていない!
そこで、今日の参考書のご案内。
著者・鈴木大介さん「最貧困女子」です。
この本を読むと、自己責任論がまったく意味のないものである事がよく解ります。
ただ、薦めといて、何なんですが、この本は精神的に調子が良い時に読んでください。
そうでないと、崖から飛び降りたくなります(笑)
冗談抜きに、本当にディープな本なので、ある程度、覚悟を決めて読んでくださいね。
僕は読みながら、あまりにも厳しい現実に、少し泣いてしまう時がありました。
まずは、引用させてください。
本音を言えばルポライターとして僕の心情は、もう限界だ。
売春する相手への嫌悪感を消すために薬物中毒になった少女がいた。
「身体が売れなくなったら死ぬ時だ」と真顔で言う16歳の少女は、初めての売春は小学5年生の時だと言った。
その身体中に、虐待の傷跡があった。
街娼する母親のもとに生まれたが、いまは売春で得た金で母と弟たちを養っていると誇らしげに語る中学3年生がいた。
知的障害を抱える母親のもとから家出し、同じく知的障害をもつ姉と路上生活と売春を一年続けたという少女がいた。
義父からの性的虐待を看過して来た母親に殺意を抱き続ける少女がいた。
風俗店5店舗に連続で面接落ちし、その週のうちに売春相手が見つからなければ、「肝臓を売れるところを教えてほしい」と言う20歳がいた。
取材期間中、幼い娘を残して自殺してしまった売春シングルマザーもいた。
彼女は売春相手とホテルに向かう際、愛娘が児童養護施設で作ってくれた折鶴をお守りのように財布に入れていた。
何も与えられず、何も恵まれず、孤独と苦しさだけを抱えた彼女らは、社会からゴミを見るような視線を投げかけられる。
もう、こんな残酷には耐えられない。
繰り返す。
抱えた悩みは同じなのに、なぜ彼女らを救おうとするものが、これほどまでに少ないのか?
この文章を読んで、あなたはどんなふうに感じたでしょうか?
全部、現実に日本で起きている事です。
この現実を知って、それでも「生活保護受給者は甘えている!自己責任だぁ!」と言えますか?
彼女たちが生活を立て直すためには、生活保護が必要だと思いませんか?
生活保護のイメージを変えて行かなければいけない!
前の文章を読んで、生活保護受給者バッシングをする人は、こんな事を言うかもしれません。
「この文章に書かれているような少女達は、本当に生活保護が必要だからいいんだよ、本当に貰うべき人じゃん!
俺(私)達は、貰うべきじゃない人、不正受給者に対して、文句を言っているんだよ」
いや、いや、それ違うんですよ!
僕(私)達が、早急に訴えなければいけない事は、不正受給者を探す事よりも、本来、貰うべき人に生活保護費が行き届いていない事なんですよ
そっちのほうが絶対に先なんです!
なぜなら、生活保護者に対する『自己責任論』や不正受給者探しの雰囲気が世の中に広まってしまうと、生活保護費を貰う事は悪い事、恥ずかしい事、というイメージが定着してしまうからです。
実際に、本に紹介される最貧困女子たちは、生活保護を恥じています。
本来なら、貰うべき貧困当事者であるにも関わらず、恥じているところがあるんです。
著者の鈴木さんがあまりにも残酷な少女たちの現実を見て、生活保護を薦めています。
中には、鈴木さんの手助けで、生活保護受給に辿り着いた少女もいるでしょう。
しかし、本の中には、生活保護を嫌がる少女達の姿もしっかりと描かれています。
「生活保護?あと二週間で結果出す。いまそう決めたばっかりで、頑張れるからわたしは大丈夫です」
けれど、そんなふうに言った少女は、姿を消してしまいました
少女は、扶養義務の照会を嫌がっていたと言います。
「生活保護?無理。ていうか生活保護とか受けたら、絶対に再婚できないって。ふたりコブ付きでメンヘラで生活保護の女とか、鈴木さんなら結婚するの?」
このように、少女たちは、生活保護に良いイメージを持っていません。
そして、生活保護の悪いイメージを作っているのが、生活保護受給者をバッシングする世論なんですよ
だから、簡単に、「自己責任」、「甘い」と言ったメッセージを発しちゃいけないんです。
ぜひ、本を読んで、じっくり考えてみてほしいと思います。