『最貧困シングルマザー』で悟った、強さとは「助けてくれ!」と言えること、弱さを見せれること
鈴木大介さんの『最貧困シングルマザー』を再読しました。
- 作者: 鈴木大介
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2015/01/07
- メディア: 文庫
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ベストセラーになった『最貧困女子』を読んでから、鈴木さんが書いた本を読み続けて来ました。
鈴木さんを知らない方は、こちらをご覧ください↓
鈴木 大介(すずき だいすけ、1973年 - )は、日本のルポライター。
「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心とした取材活動を続ける[1]。『家のない少年たち』は週刊モーニング連載の漫画『ギャングース』(肥谷圭介画)の原案となった。2015年、『最貧困女子』で第14回新潮ドキュメント賞候補
当ブログでも紹介させて頂いています
生活保護受給者に自己責任論を訴える人は、鈴木大介氏『最貧困女子』を読んでみろ! - 脱貧困ブログ
さて、この本を読むのは、今回で3回目。
この本は、読むたびに、注目する部分、心が動かされるポイントが違う不思議な本なんです
まぁ、そもそも、その時の自分の感情、環境によって、心が動くポイントが違くなる、っていうのが本を読む醍醐味なのかもしれません。
で、今回、読んでみて、僕が感想として強く持ったのは、多くの人が『強さ』を勘違いしている、って事なんです。
タイトルにもあるように、『強さ』とは、堂々と「助けてくれ!」と言えること、弱さを見せれること、だと改めて感じたんですよ
けして、「人より能力が優れていること」だったり、「弱点を見せない」事じゃない。
むしろ、強さって、その逆なんです。
それは、この本の第5章を読むと、よく解ります。
ちょっと気になった部分を引用してみましょう。
福祉を「拒絶」する母
鈴木さんが「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」を取材した時の事です
「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」とは、母子家庭の救済、地位向上をシングルマザー自身が図っていくための自助団体。
生活保護の母子加算廃止問題でも最も積極的に発言を繰り返してきた市民グループです。
ぜひ、WEBサイトもご覧ください↓
鈴木さんは「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」に取材して行く中で、自分自身が最貧困シングルマザー達と向かい合って感じた、絶望感、無力感を話して行きます。
「ある取材対象者の場合、両親との関係は完全に断絶しており、何年も連絡を取っていない。
他に頼れる親族もいない。一人娘はすでに施設に保護されているが、うつ症状は相当に酷く、大量の薬でなんとか自殺願望を抑え込んでいる状態。
なんどかハローワークにも通ったが、とてもまともに仕事ができる体調でも心理状態でもない。
失職して出会い系サイトで会った男から貰うお金が所得のすべてになって半年状態。
貯金はほどんど使いつぶし、財産になるものもなく、ついに家賃にクレジットカードで借りたお金を充てたところだった。
すなわち、完全に後がない状態だったんです」
こんな状況から、鈴木さんは取材対象者に、生活保護を薦めます。当然の事ですね。
生活保護を利用すれば、とりあえず生活を立て直す事が出来ます。
しかし、事態はそう簡単には進みません。
「もう頑張りつくして来たのだから、生活保護を受け精神障害者(保険福祉)手帳も取得して、少し休んでもいいのでは?」
こんなふうに、取材対象者に呼びかけた鈴木さん。
けれど、その呼びかけはまったく届きません。
「鈴木さんは本当に何も知らないからそんな事が言えるんだよ
生活保護なんて受けたら、このへんじゃみんなすぐにバレちゃう。
仕事も来なくなるよ。障害者手帳は前の(精神科の)先生からも取ればいいって言われたけど、よくそんな、、、、。他人事だから言えるんでしょ!」。
にべもなく電話をガチャリと切られた。
また、こんな事も言われました。
「でも~、やっぱり無理だって、生活保護を受けたら周囲の目だってあるし。
今まで無収入で生きて来た事だって、普通に考えたら彼氏がいて、養ってもらってるって思われるに決まっているじゃん。
そうじゃないことを、どう説明するのか解らない。出会い系でどうのこうのとか説明するの絶対無理」
この反応は一人だけではありません。
他のシングルマザーも同じような反応をするんです。
たとえば、こんな意見。
「子供は残酷だから、どんなことでもイジメになるでしょ。
うちの地元は母子家庭もうちだけじゃないし、少なくないけど、前にこんな話しがあった。
節約しようとして、リサイクルショップで子供の鞄を買ったお母さんがいたのね
でも、それが同級生のお兄ちゃんが売った鞄で、それが理由でイジメを受けるようになっちゃった」
このように、生活保護を必要とする最貧困のシングルマザー達は、周囲の目、差別から来る子供のイジメを怖がって、なかなか生活保護を受けようとしません。
最貧困の状態であるのに、受けようとしないんです。
この残酷な現実を知った鈴木さんは、次に「NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ」のような支援団体に繋げる事を考えます。
しかし、これも簡単ではありませんでした。
「その人たち(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ)に今までの(出会い系で売春して来た)事ことを言うの?、それは無理だよ
どうせ話したらあなたが悪いって言われる。(売春のこと)言わないで、生活保護の手伝いをしてくれるの?鈴木さんから紹介した時点で、(売春をしたシングルマザーだって)解ってるんじゃ、意味ないよ。
そもそも、うちまで来てくれるのかな、電話の相談しても通じないとかない?いつも話し中なんじゃないの?」
こんなふうにシングルマザーに言われてしまったんです。
このコメントは、女性たちの集団、グループの中で、イジメや差別を長年、受けて来たトラウマが言わせているんだと思います。
鈴木さんが絶望感、無力感を持ってしまったのも無理はありません。
積極的に『助けて!』と言って行こう
ここまで読んで、皆さんはどんなふうに感じたでしょうか?
もしかしたら、「もう知らない!、そんな奴ら、ほっておけ!、俺(私)達にはどうする事も出来ない」と、諦めるかもしれません。
解る、すごく解ります。
でもね、これから、ますます少子高齢化が進んで、働けない高齢者が増えて来ます。
消費税だって、上がる。日本の社会全体が弱くなって行くんです。
それは、逃れられない。最貧困の問題は、嫌でも、自分たちの問題として引き受けなければいけないんです。
もっと、はっきり言ってしまえば、最貧困の人達がじわじわと増えて行く社会になって行くという事ですよ。
解決策は、簡単じゃありません。しかし、今日から出来る事が一つあります。
それは、困ったら助けを求める癖をつけること、です。
自分の事は自分でやる、人に迷惑をかけないとか、そういうのは、もう辞めましょう。
だって、そんな想いが鈴木さんの本で紹介された最貧困シングルマザー達を苦しめている事は間違いないからです。
また、人に迷惑をかけること、助けを求めることに、もっと寛容になりましょう。
社会全体に「助けて!」と言っても、バカにされたり、怒られたりしない雰囲気が もっともっと必要なんです。
この本を読んでみると、人に「助けてくれ!」と、言えることこそが「強さ」だと思えてなりません。
勇気を出しましょう。本当の意味で強くなりましょう。
共に、勇気を出して、「助けてくれ」と言える人になろうではないか?!