生活保護の最優先課題は、不正受給撲滅よりも使える人が使えてない問題を解決すること
今、生活保護「なめんな」ジャンパー問題が話題になっています。
知らない人のために、簡単に説明しましょう。
1月17日に小田原市の生活保護の担当職員が「生活保護なめんな」と書かれたジャンパーを着て、生活保護を利用している人の家を訪問などしていたことが明らかになりました。
ジャンパーの背面には「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おう。クズである」などの文章が英語で書かれていたと言います。
詳しくは、自立サポートセンター・もやい理事の大西連さんの記事を読むと、よく解ります。
さて、こういう問題が出るたびに、私は考える事があるんですよ。
それは、多くの人が生活保護問題の最優先課題を間違えてるんじゃないか、という事です。
こんな事を言うと、こういう意見が出て来るかもしれない。
「いや、いや、この問題は、生活保護利用者を非難してるんじゃなくて、不正受給者を非難してるんだよ、ジャンパーの意味はそういう事だろう?」
確かに、そうかもしれない。しかし、大西さんが指摘しているように、不正受給の問題を解決するためにやっていたなら、あまりにもナンセンスです。効果がない。
「おまえは子供か!」と、つっこみたくなってしまう。
そして、何より一つ心配している事があります。
それは、今回の生活保護「なめんな」ジャンパーのような問題が話題になると、本来、生活保護を使える人が萎縮(いしゅく)して、生活保護利用を諦めてしまうのではないか、という事なんです
どういう事か、ちょっと説明させてください。
生活保護最大の問題点
はっきり言います。
生活保護の最優先課題は、不正受給撲滅よりも使える人が使えてない問題を解決することです。
いや、もちろん、不正受給は問題ですよ。だから、やってはいけません。
しかし、それよりも重要なのは、今、あまりにも生活保護を使える人が使えていないという問題なんです。
解りやすく説明するために、ルポライター・鈴木大介さんが書いた『最貧困女子』から引用したいと思います。
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現実を知ってください。
本音を言えばルポライターとして僕の心情は、もう限界だ。
売春する相手への嫌悪感を消すために薬物中毒になった少女がいた。
「身体が売れなくなったら死ぬ時だ」と真顔で言う16歳の少女は、初めての売春は小学5年生の時だと言った。
その身体中に、虐待の傷跡があった。
街娼する母親のもとに生まれたが、いまは売春で得た金で母と弟たちを養っていると誇らしげに語る中学3年生がいた。
知的障害を抱える母親のもとから家出し、同じく知的障害をもつ姉と路上生活と売春を一年続けたという少女がいた。
義父からの性的虐待を看過して来た母親に殺意を抱き続ける少女がいた。
風俗店5店舗に連続で面接落ちし、その週のうちに売春相手が見つからなければ、「肝臓を売れるところを教えてほしい」と言う20歳がいた。
取材期間中、幼い娘を残して自殺してしまった売春シングルマザーもいた。
彼女は売春相手とホテルに向かう際、愛娘が児童養護施設で作ってくれた折鶴をお守りのように財布に入れていた。
何も与えられず、何も恵まれず、孤独と苦しさだけを抱えた彼女らは、社会からゴミを見るような視線を投げかけられる。
もう、こんな残酷には耐えられない。
繰り返す。
抱えた悩みは同じなのに、なぜ彼女らを救おうとするものが、これほどまでに少ないのか?
どうでしょうか?、紹介された女性達はどう考えても、生活保護が使えるのに、生活保護を使えていません。
もっと言えば、生活保護だけではなく、使える行政の制度を遠慮なく使って行かなければ、彼女たちの社会復帰は実現出来ないんです。
こういう本来なら、生活保護が使える人達に生活保護が届いていない問題をどうするか、を真剣に考えて行かなければいけません。
でも、考えてみてください。
今回のような生活保護「なめんな」ジャンパーを擁護(ようご)して、「不正受給を無くすために着るなら良い」とか言っていると、いつまで経っても「最貧困女子」で紹介された本当に困っている人達に生活保護が届きません。
今回のジャンパー騒動を見て、「生活保護を利用しようと思ったけど、なんか怖そうだから、使うの辞めよう」と思ってしまう可能性があるからです
だからこそ、皆さんにお願いしたい。
不正受給の問題を言うのなら、それと同じぐらい、いや、それ以上に生活保護を使える人が使えてない問題に注目し、声をあげてほしい。
私以外に、「生活保護を使える人が使えていない問題」をテーマにして記事書いてるブロガーいますか?
いないでしょ?、圧倒的に少ないんですよ、でも、「不正受給」をテーマにして記事書く人はけっこういる。バランス悪すぎです。
共に、生活保護が使える人が使いやすい世の中にして行こうではないか?!
以下の本が参考になりました。生活保護を知る時にオススメです。
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