みんな、頑張り限度を上げないために、不幸比べはもう辞めよう
つい最近、NPO法人自立サポートセンター、もやい理事、稲葉剛さんが書かれた「貧困の現場から社会を変える」が販売されました。
- 作者: 稲葉剛
- 出版社/メーカー: 堀之内出版
- 発売日: 2016/09/10
- メディア: 単行本
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稲葉さんのプロフィールを簡単にご紹介しましょう。
両親は原爆投下直後の広島に疎開先から入った「入市被爆者」であり、被爆二世として戦争や平和の問題に敏感な子どもとして育つ。
東京大学教養学部教養学科卒(専門は東南アジアの地域研究)。在学中から平和運動、外国人労働者支援活動に関わり、1994年より東京・新宿を中心に路上生活者支援活動に取り組む。
2001年、湯浅誠らと共に自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者の相談・支援活動を開始。2009年、住まいの貧困に取り組むネットワークを設立し、住宅政策の転換を求める活動を始める。
また、2011年より生活保護制度の改悪に反対するキャンペーンに本格的に取り組んでいる。
そして、2014年、東京つくろいファンドを設立。
プロフィールを見ただけでも、稲葉さんが貧困支援の現場に長い間関わって来た事が解りますね。
今回、出版された本には、そんな稲葉さんが「貧困の現場」で見て来たリアルな問題点が書かれています。
ちょっと、目次を見てみましょう。
第1章・私が取り込んで来た生活困窮者支援
第2章・権利としての生活保護
第3章・バッシングと差別
第4章・拡大する住まいの貧困
第5章・自立支援を問う
第6章・対談・藤田孝典×稲葉剛
どうでしょうか?、どれも、見逃せない問題のように思えます。
が、きっと、この記事を読んでいる皆さんの生活状況によって、注目したい章が変わってくる事でしょう。
私の場合は、第2章・権利としての生活保護と第3章・バッシングと生活保護です。
当ブログは貧困問題解決をテーマにしています。
で、貧困問題解決をテーマにブログを書き続けて思う事があるんですよ
それは、「どうして、貧困当事者に対するバッシングがこれほどまでに強くなっているのか?」、という素朴な疑問です。
考えてみれば、不思議じゃないですか。今の日本は、生活困窮者が増えています。
だから、普通に考えれば、お互いに生活に苦しんでいるんだから、お互いに気持ちを理解できるはずです、本当は。
しかし、報道やネットなどを見てみると、生活に苦しんでいる者同士で叩き合っているように思えます。
なぜ、こんな事になってしまうのか?、皆さん、どう考えていますか?
実は、先日、「貧困の現場から社会を変える」の出版記念トークイベントが行われました。
私の素朴な疑問のヒントが聴けるのではないか、と思い、早々と予約をして行って来ました。
今回は、本を書いた稲葉さんとゲストの小説家、星野さんの対談で見えて来た、貧困当事者へのバッシング構造について考えてみましょう。
頑張り限度が上がって行く世の中になっている
今回のトークイベントで心に残っているキーワードをいくつかご紹介しましょう。
頑張り限度
不幸比べ
自立と孤立の違い
この3つです。
稲葉さんが言っていた印象的な話しがあります。
「自分は残業続きで、一日5時間しか寝ていない」と言うと、「何を言ってる!、俺(私)は3時間しか寝てないぞぉ」と怒る人達がいる
「自分は食費に一日1000円しか使ってない」と言うと、「甘えるな、俺(私)はもっと低いぞぉ」と怒る人達がいる。
こんな意見が世の中にあふれて行くと、頑張り限度が上がってしまうのではないでしょうか?
「そうか、一日3時間しか寝てない人がいるなら、俺(私)も3時間睡眠で我慢しなきゃ」と思ってしまう事によって、国民全体の頑張る基準が上がる。
そうなると、ますますブラック企業の思うつぼだし、貧困も広がって行ってしまう。
どうでしょうか?、稲葉さんの意見を聴いても、やっぱり、貧困当事者同士の不幸比べが起きてしまっている、と言えるでしょう。
では、どうすればいいか?、簡単にすぐ解決する方法はありませんが、まず最初の一歩として、自立と孤立の違いを理解する事なのではないか、と思うんです。
自立と孤立は違う
稲葉さんはこんな事を言っていました。
自立とは、困った時にSOSを出せる事だと思います。
しかし、国(政府)は、自立とは、一人で立つ事だと考えている。
私は、長年、生活困窮者支援をして行く中で、自立と孤立は違う事を実感して来ました。
私は、こんなふうに考えています。
自立=SOSを出せること
孤立=一人で立つこと
私の素朴な疑問の答えもここにあるように思います。
少しでも貧困バッシングを無くすために、孤立ではなく、本当の意味での自立を目指して行くこと。
その道をコツコツと進んで行くしかありません。
共に、頑張り限度を下げて、本当の意味での自立を目指して行こうではないか?!