脱貧困ブログ

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つくろい東京ファンド代表理事・稲葉剛氏から学ぶ、なぜ路上生活やネットカフェ生活から抜け出せないのか?

10月の始め、長年、日本の貧困問題と向かい合って来た稲葉剛さんの講演会がありました。

題して、『なぜ路上生活やネットカフェ生活から抜け出せないのか?~東京を修繕しよう!つくろい東京ファンドの挑戦~』

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このテーマは、皆さん、けっこう日頃から意識していると思うんですよ

「ネットカフェとか行かないで、知り合いを頼ればいいじゃん!」

「役所に行って、生活保護を貰えばいいんじゃねぇの?」

そんなふうに思っている人も多いんじゃないでしょうか?

でも、冷静に考えて、疑問に思う人もいるでしょう。

「人に頼れなかったり、生活保護を貰えないのは、何か理由があるんじゃない?」

僕もそう思います。

今日は皆で考えてみましょう。

 

解らない事はその道のブロに聴こう♪

 

何か疑問が出たら、その道のプロに聴くのが一番です。

日本の貧困問題に詳しい人と言えば、この人。

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NPO法人自立生活サポーセンター・もやい理事・稲葉剛さんです。

簡単にプロフィールをご紹介。

1969年、広島県広島市生まれ。

両親は原爆投下直後の広島に疎開先から入った「入市被爆者」であり、被爆二世として戦争や平和の問題に敏感な子どもとして育つ。
東京大学教養学部教養学科卒(専門は東南アジアの地域研究)。

在学中から平和運動外国人労働者支援活動に関わり、1994年より東京・新宿を中心に路上生活者支援活動に取り組む。
2001年、湯浅誠らと共に自立生活サポートセンター・もやいを設立し、幅広い生活困窮者の相談・支援活動を開始。

学習塾講師として生計を立てながら活動を続けるが、2008~09年の派遣切り問題を機に退職し、活動に専念することに。
2009年、住まいの貧困に取り組むネットワークを設立し、住宅政策の転換を求める活動を始める。

また、2011年より生活保護制度の改悪に反対するキャンペーンに本格的に取り組んでいる。

そして、2014年、東京つくろいファンドを設立。

経歴を見ただけでも、稲葉さんが自分の全人生を貧困問題解決に捧げて来た事が解ります。

これは、「なぜ路上生活やネットカフェ生活から抜け出せないのか?」という質問をするのに打ってつけの人です。

僕は、そんなふうに考え、講演会に駆けつけたというわけです。

 

稲葉さんのアウトリーチ活動から見えてくる、生活保護の問題点

 

アウトリーチ活動とは、援助が必要にも関わらず自発的に申し出をしない人々に対して、公共機関・NPOなどが積極的に働きかけて支援の実現を目指すこと)

 

問題の根源は、稲葉さんのアウトリーチ活動から学ぶ事が出来ます。

まず、下の表を見てみてください。

稲葉さんの活動が解るグラフです。

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 A・路上支援・追い出し反対、炊き出し、夜回り、医療支援など

B・路上脱出支援・入居時の保証人提供、生活保護申請同行など、住まい作り

C・路上脱出後支援・居場所づくり、葬送支援

D・路上化予防・追い出し屋告発、住宅政策の転換を求める運動

E・貧困化予防・貧困の世代間連鎖をなくす活動

F・貧困の可視化・貧困の構造を社会に伝え、差別、偏見をなくす活動

一つ一つ見て行きましょう。

 

『何で生活保護を受けないの?』という疑問について

 

この疑問は、Bの路上脱出支援に関わって来る問題だと思います。

稲葉さんは、こんなふうに話してくれました。

生活保護には、3つの壁があります。

1・住所の壁

「住まいのない人は生活保護を受けられない」とウソの説明をする。

2・稼働能力の壁

「65歳以上または医師が就労不可と認めた人のみ」という不当な制限を受ける。

3・施設保護の壁

集団生活の施設に入ることを生活保護の前提であるかのように説明する

 

これは、俗にいう水際作戦です。 

「水際作戦」とは、生活保護申請の唯一の窓口である福祉事務所が、本来保障されているわたしたち一人ひとりが制度にアクセスするための「申請権」を無視して、違法・不当に申請を受け付けなかったり、阻止しようとすること。

 おそらく、1の住所の壁は、「あれ?住所がなきゃ生活保護無理なんでしょ?」と、思った人がいるのではないでしょうか?

 ところが、違うんです。

現時点で住所が無くても、生活保護を申請する事が出来ます。

確かに、生活保護法では、「居宅保護の原則」と言って、家がないと保護は受けれませんという決まりになっています。

しかし、それは、絶対ではありません。

 たとえば、あなたがネットカフェにいたとしても、今いる場所の福祉事務所を「現在地」として申請すれば、そこが仮の住所になるんです。

住所があれば、生活保護を申請する資格があるというわけなんですね。

これは、ネットで調べても、なかなか出て来ないので知っておくと便利です

 

このように、『何で生活保護を受けないの?』という疑問に対しては、受けたくても追い返されてしまうという問題があるんですね

 

『知り合いに頼ればいいんじゃないの?』という疑問について

 

次に、『何で知り合いに頼らないの?』という疑問についてです。

この疑問の答えは、実にシンプル。

頼りたくても、頼る人がいないんです。

中には、『そいつが性格悪いから友達いないんでしょ?自業自得じゃん』と思った人もいるかもしれません。

言いたい事はよく解ります。僕も性格が悪い奴嫌いです(笑)

でも、ここで、思い出してほしい事があります。

それは、生活保護法の有名な一文です。

「すべての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる」

この一文の無差別平等という言葉がポイントです。

つまり、どんな人でも受ける事が出来る法律なわけですよ

無差別平等なんだから、性格が嫌な奴だろうと関係ありません

もっと言うと、人の好き嫌いで支援する人を決めてしまうのは、生活保護法の精神に反するという事なんですね

もちろん、嫌な奴を通り越して、犯罪者になってはいけません

ただ、無差別平等の精神を忘れたくないですね

 

ワークファーストではなく、ハウジングファースト

 

「なぜ生活保護を受けないの?」、「知り合いに頼ればいんじゃないの?」という疑問について、それぞれの事情がある事が解りました。

では、様々な問題が山積みになった状態で、僕らは何が出来るのでしょう?

稲葉さんが今年、一番に行った事は、住まいの支援でした。

以下、引用。

2000年ごろから、生活保護を受ける人から生活保護の大半を支払わせて相部屋形式の施設に押し込む「貧困ビジネス」が問題となっていました。

特に、リーマンショック以降、「生活保護を受けたいが個室で住める所がない」という相談が増えたんです

都内には、生活困窮者を対象にした施設が100近くありますが、個室の施設は少なく、東京のセーフティネットの穴になっていると感じました

稲葉さん達が、そんな想いで作ったのが、つくろい東京ファンドです。

つくろい東京ファンドの第一弾企画は、個室シェルタープロジェクト、「あわやハウス」
中野区内にあるビルを改装し、住まいのない生活困窮者のための個室シェルター(8部屋を予定)を開設しました。

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イメージキャラクターの猫めいちゃんです。

猫好きには、たまらない可愛らしさ(笑)

 

根本的な精神は、ハウジングファーストモデルです。

1990年代に米国で始まり、カナダやフランス、スウェーデンなどで広く実践されています。

ホームレス状態にある方の支援モデル。

『住まい+サポート』を主軸としていて、以下の二点が特徴です。

 

1・まずは住まい、~相談後すぐにアパートに入居

2・主体は本人

 

多くの行政は、「まずは仕事を探してくれ」と要求して来ます。

しかし、それでは、ウツや精神的な障害を持った人などは、どうすればいいのだろう?という疑問が出て来るんです。

何はともあれ、仕事探しよりも先に、住まいを探すお手伝いをする。

それが、結果的に、多くの生活困窮者の方の仕事探しをサポートする事になると稲葉さん達は考えているようです。

 

2の本人主体も重要です。

支援者や行政が住む場所を決定するのではなく、利用者本人が決定することが重要であるという考えですね。

 

今後もつくろい東京ファンドを応援して行きたいと思います!

 

こちらのサイトもご覧ください♪


稲葉剛公式サイト » つくろい東京ファンド~住まいのない人に安心して暮らせるシェルターを!


東京を修繕しよう。稲葉剛氏が「つくろい東京ファンド」を立ち上げて「個室シェルター」の運営をスタート : まだ東京で消耗してるの?


生活困窮者の自立にはまず“住まい”が必要?定員7名の個室シェルター「あわやハウス」の試み ――政策ウォッチ編・第79回|生活保護のリアル みわよしこ|ダイヤモンド・オンライン